What a diff'rence a day made

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何人かのヴォランティアで手分けしてマニュアルを訳しているとき、 「ol'」という単語が出てきて悩んでいる人がいた。 その人の辞書にはこの手の「発音綴り」はあまり載っていなかったのだろう。 人それぞれ得意/不得意な分野があり、 解らないところを質問しあったり相互にレヴューしたりできるのが複数で作業する利点だ。 そういうセッションは一期一会、互いの勉強にもなる。

普段の仕事はひとりなのでそうはいかない。たまたま「ol'」は「old」のことだと知っていたが、 この手の表記はコンピューター関連の文書ではまず見かけない。 どこで見たんだっけ? Sarah Vaughanの「Lullaby of Birdland」あたりの歌詞で出てきたんだっけな。 「'S Wonderful」ってどういう意味かはAnita O'Dayのレコードを買ったときに知ったのだったかもしれない。 ああ、この人ったら名前にまで「'」がついてる。

仕事に役立ちそうもないことばかり覚えてる気もするが、 telexで「Cc」とか「TNX」ってのを見てたからe-mailを使ったときに戸惑わなかったんだし、 Subjectなどに付いている「Re」が省略形じゃなくて1つの単語だというのもそのころ覚えたのかもしれない。 何がどこで役立つかわからないのだから、まったくの無駄とも言いきれない。

ところで、米国人は日本人より「ほめる」のがうまい気がする。 ライヴハウスで歌っているとき、「英語が上手だね」と(当然英語で)ほめてくれた人がいた。 そういう人に出会うとやはり素直にうれしい。 自分で「うまいわけない」って解っていても、 あまりお世辞っぽくもなくjokeっぽくもなくほめてくれるもんだから、少しいい気分になれるのだ。 みんながあれぐらい「上手にほめて」くれれば、ほめられた人も気分よくなって、 それをきっかけに本当にうまくなるかもしれないのにと思う。

歌詞じゃなくてふつうの「英会話」になるとさらに自信はない。 相手の言うことはだいたいわかっても、受け答えはカタコトと度胸だけだ (それでも、相手がゆっくり解りやすくしゃべってくれているのを聞き取れない私の夫よりはまだましだが)。 「仕事は何してるの?」と(英語で)聞かれたのだが、 「翻訳」って答えたら、「Oh…」と、手の平を上に向けて、おどけたような顔をされた。 『そんなカタコトしかできないヤツが英語を日本語に翻訳できるのか?』と、 神様に助けを求めたい気持ちになったのかもしれない。 あとで辞書をひいて、「translator」(翻訳者)には「通訳」(interpreter)の意味もあると知り、 だから困った顔をされたのかな、などと悩んでみたり(どうやらあまり関係ないらしい)…。

歌詞についても、知らない単語があればこんな風に辞書をひいて意味を理解しながら80曲ほど憶えてきたのだが、 そんなことをしている当時は、ある日をきっかけに自分が翻訳の仕事をすることになるとは夢にも思ってなかった。

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(@_@)                Kusakabe Keiko
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